法人口座開設の審査基準とは?難航する理由と開設のポイント

法人の銀行口座は、個人口座に比べて開設の審査が厳しく「なかなか作れない」といった声が多く聞かれます。

法人を設立し事業をスタートするにあたって、銀行口座開設は早めに行っておきたいもの。

しかし審査に通らない、手続きが煩雑、膨大な書類の提出を求められるなど、容易ではありません。

なぜこのように法人の口座開設は難航するのでしょうか。

 

 

 口座開設が難航する主な理由

 

その背景には、マネーロンダリング防止の観点から銀行の厳格な確認体制が存在します。

確認体制を怠ったために問題生じてしまうと、銀行側が行政処分や巨額の罰金、信用失墜といった重大なリスクを負います。

そのため口座開設時には「資金の出所」「事業の実態」「取引先の信頼性」を厳しく確認し、疑わしい取引は報告義務(犯罪による収益の移転防止法)に基づいて届け出る仕組みになっています。

銀行独自の審査基準は一切非公開であり、実際に開設できなかった場合の理由は一律に開示されません。

しかしながらいくつかの理由が考えられます。

 

①実態が不明瞭

オフィスや店舗が実際に確認できない。
レンタルオフィス・バーチャルオフィスを本店所在地としている。

②事業内容が不明瞭

具体的にどのようなサービスや商品を扱い、誰と取引しているかが説明できない。
履歴事項全部証明書に関連性のない目的が多く、主たる業務が見えない。

③社会的信用不足

設立直後で実績がない、または著しく乏しいため、事業が継続できるか判断がつかない。
資本金が極端に少なく、ペーパーカンパニーの疑いがある。

④業種リスクが高い

金融関連や海外取引中心である、社会的規制業種などである。

⑤書類の不備不足

登記事項証明書や定款などが揃っていない。
最新の書類でない。

 

 審査を通りやすくするポイント

 

①最新の法人確認書類を用意

重要なのは、会社の基本情報を整えることです。

登記事項証明書や定款といった基本書類を、しっかりと最新の内容で揃えることが大切です。

②事業内容を明確に

事業内容を明確に説明できるようにします。

ホームページやパンフレット、オフィスの写真などを準備し「どのような商品やサービスを扱い、誰を相手に取引しているのか」を示す必要があります。

また履歴事項全部証明書の目的欄は関連性のある業務に絞ることも重要となります。

あとになって目的欄の追加をすることは可能なため、現段階では行う業務について記載をするようにしましょう。

③資金の流れをクリアに

さらに資金の流れを明らかにすることも必要です。

資本金の入金経路を明確にし、契約書や請求書などの証明を用意しておくと効果的です。

④社会的信用の補強

ホームページや名刺を整え、事業の実績を示すことができるツールがある場合は、銀行の安心感にもつながります。

個人事業時代の実績や決算書、事業計画書を提示することでも信用力を補強することができます。

 

 それでも開設できないとき

 

それでも口座開設がでいないときはいくつかの対応策があります。

まず検討すべきは代表者本人の個人口座を持つ銀行に相談することです。

個人としての取引実績があることで、銀行側が代表者の人物像や資金の流れを把握しており、法人としても一定の信用を得やすくなります。

 

また取引先に銀行を紹介してもらうことも効果的です。

すでに口座を持っている企業や顧客が「この会社は取引実態のある信頼できる法人です」と紹介してくれることで、銀行側の安心材料になります。

 

さらに審査が比較的柔軟なネット銀行で法人口座を先に開設し、実績を積むこともよく取られる手段です。

ネット銀行はオンライン取引に特化しているため手続きがスピーディーで、開設のハードルもやや低い傾向にあります。

創業間もない法人でも受け入れられるケースが多く、開設後の入出金履歴や取引履歴を積み重ねることで、会社の信用度を強化することができます。

この実績を持ってメガバンクや地方銀行など大手金融機関に改めて申請すれば、過去の履歴が信用の補強材料となり、審査通過の確率が上昇します。

 

実態を明確に示し、段階的に信用を積み重ねることが重要

 

以前、某大手銀行の法人口座開設の担当者と話す機会がありましたが、開設申請の件数のうち許可となるのは3割程度にとどまるそうです。(非公式)

つまり多くの法人が一度は断られているのが現状です。

実態を明確に示し、段階的に信用を積み重ねることが、口座開設への近道となります。