診療所の緊急経営調査結果について

 近年の診療所の経営状況

 

日本医師会は9月17日に「診療所の緊急経営調査結果」を公表、令和6年度の診療所経営は大幅に悪化していることが明らかになりました。

医療法人の診療所では約4割が赤字に転落し、個人立診療所も利益は大幅に低下。

多くの診療所が厳しい経営環境に直面している状況にあります。

 

 

[出典]公益社団法人日本医師会「令和7年診療所の緊急経営調査結果」

 

※医療法人と個人立では損益計算書の性質が異なり、個人立は開設者の報酬が費用に含まれないため、利益率は高めに算出されます。

 

 赤字拡大の主な要因と経営課題

 

主な要因

 

①物価高騰・人件費上昇
②コロナ関連補助金や診療報酬特例廃止による減収
③診療報酬改定のよる診療単価の低下による減収

 

赤字要因として特に大きいのが、物価高騰と人件費上昇です。

近年の物価高の影響により医薬品や材料が軒並み高騰し、光熱費等の日常的な支出も値上がりの一途をたどり、診療報酬に十分転嫁できないため利益を圧迫します。

最低賃金の引き上げや人材確保のための給与水準引き上げは固定費の増加を招き、収益性を下げる大きな要因となっています。

また新型コロナ対応に伴う各種特例的な加算や支援が段階的に廃止され、その分の補助収入がなくなったことも経営を一層厳しくしています。

さらに診療報酬改定よる影響は、従来得られていた加算点数が縮小し外来収入に直結することとなります。

これらの要因が重なり、医療機関の経営環境は以前よりもシビアなものとなっています。

経営課題

  

以下のグラフを見ると、医療機関が直面している経営課題の深刻さが一目で分かります。

経営者の抱える経営課題として「物価・人件費上昇」「患者単価の低下」「受診率の低下」が多数挙げられました。

また「施設設備の老朽化」「廃業の検討」といった回答の割合は、現場の危機感の強さを示しています。

こうした状況を見ると、地域医療の存続や制度の在り方そのものが問われていると感じます。

 

[出典]公益社団法人日本医師会「令和7年診療所の緊急経営調査結果」

 

 経営改善のポイント

 

診療所の経営改善には「収入を確保する取り組み」と「経費を適正化する工夫」を、数字で把握することが求められます。

新しい診療報酬加算や制度を積極的に活用し、健診や自費診療など多様なサービスを取り入れることで収入改善を。

在庫管理の徹底やICT導入による業務効率化をにより経費削減を。

納税や設備投資の支払いによる資金ショートを防ぐために、資金繰り管理を徹底することも不可欠です。

次回改定や支援施策の発表を注視しつつ、早めに経営改善の手立てを検討することが重要となります。